転移と逆転移

精神分析で転移とは患者が治療者に対して特別な感情を抱くことである。逆転移とは転移に対して治療者が患者に特別な感情を抱くことである。陽性転移とはポジティブな転移のこと。恋愛感情など。陰性転移とはネガティブな転移のこと。私を好きになってくれない先生なんて大嫌い!恨んでやる!みたいな転移。

何故転移が起こるのか?転移の辞書的な定義では幼児期に身近な人間への抑圧した感情を治療者に向けて抱いているという。実際には、人を好きになるのは昔自分が好きだった人間に似ているからある人を好きになるということだ。治療者は患者に会っているときは患者に対して信頼感を示してくれたりするので患者は治療者に転移しやすい。

精神科医と患者が結ばれることは精神科医が倫理的な医師であれば絶対にない。カウンセラーは法的に患者と結ばれることを禁じられている。

フロイトは偉大である。治療に失敗してもそのことを論文にする。転移と逆転移についても論文を書いている。転んでもただでは起きない。

最近では医学部のテキストに医師に転移した患者への対応をどうするのか?を問題にしたものもある。次のようなものだ。

入院中の患者、以前から好意的な態度を示しており、突然診療中に手を握ってきた。医師として適切な対応はどれか。
a. どうしたのか聞くb.何もせずにそのまま握らせておくc.黙って手を払いのけるd.手を握り返すe.「何をするんですか」と怒鳴る。

例解はa。ただ入院するほどの患者であれは手を握って安心させることも必要であり、あながちdも間違いではないのではなかろうか?

治療者のことを好きな患者さんがいたら次のようにアドバイスする。

転移は恥ずかしいことではないし想いを伝えることは大事だと思う。でも程々に。

ちなみに私の主治医は美人で頭がよくて性格がいい。私は転移している。